右門捕物帖
妻恋坂の怪
佐々木味津三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)二日《ふつか》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)善光寺|辰《たつ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#疑問符感嘆符、1−8−77]
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     1

 ――その第二十一番てがらです。
 事件の起きたのは、年を越して、それも松の内の二日《ふつか》。
「めでたさも中ぐらいなりおらが春」――というのが俳諧寺一茶《はいかいじいっさ》の句にありますが、中ぐらいでも、下の下の下々であっても、やりくり、七転八倒、夜逃げの名人であろうと、年が明けたとならばともかくもめでたいというよりいいようはない。ましてや、上の上の上々の大名諸侯が、言いようもなくめでたいのはあたりまえなことなので、だからこの二日の日がめでたすぎるそれらお歴々の、三百二十八大名全部が、将軍家へお年賀言上のために総登城する定例なのでした。
 一国一城のあるじにしてすでにそうであるから、およそ官途《かん
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