ん》がつきかかったんですかい」
「いらぬお世話だよ」
「ちぇッ、なにもすねなくたって、いいじゃござんせんか! あっしのがみがみいうのは、今に始まったことじゃねえんだ。鳴るがしょうべえだと思や、腹たてるところはねえでやしょう。意地のわるいことをおっしゃらねえで、聞かしておくんなせえな」
「いいや、よしましょうよ。わたしはどうせふろ屋の番台だからね、アハハハ。いいこころもちだね」
にやにやしながら、さらにあちらをこちらをと捜していましたが、そのときふとまた目についたのは、そこの茶の間の茶だんすの上にあった子どものおもちゃ箱です。あけてみると、まず第一に現われたのは首振り人形。それからやじろべえ。つづいてめんこ、でんでん太鼓にピイヒョロヒョロの笙《しょう》の笛。その下からただのおもちゃにしては少しおかしい変な玉が三つころころと飛び出しました。赤に、白に、黄――。大きさはすももくらい。
「よッ。江戸も広いが、こんなおもちゃは知らないぞ。まさに、これは玉ころがしに使う玉だな」
「え……? なんです? なんです? 玉ころがしとは、浅草のあの玉ころがしですかい」
「いらぬお世話だよ」
「ちぇッ、な
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