、値段は高い! 値段が高価ならば、少禄《しょうろく》の者ではまず手中しがたい! しがたいとするなら、いうまでもなく高禄の者が、それもよほどの数寄者《すきしゃ》好事家《こうずか》が、買うか、鍛《う》たせたかに相違ないのです。相違ないとするなら――。
「伝六ッ」
「できました!」
いつのまにか敏捷《びんしょう》に借り出してきたとみえて、棒はなをそろえながら待っていたのは、お陸尺《ろくしゃく》つきのお屋敷|駕籠《かご》が二丁――。
「暫時拝借させていただきとうござります!」
「おう! いかほどなりとも!――吉報、楽しみに待ちうけているぞ!」
宰相伊豆守のおことばをうしろに残して、手がかりとなるべきそれなる千柿鍔の一刀をかかえ持ちながら、ごめんとばかり駕籠の人となると、主従ふたりは、今なお降りしきる雪を冒して、千柿老人の住まいなる浅草へ! 聖天町へ!
3
行きついたとき、初更のちょうど五ツ――
「ここだッ。ここだッ。ここが千柿老人の住まいでこぜえます! 今度ばかりゃ、いかなどじの伝六でもへまをするこっちゃねえから、あっしに洗わしておくんなせえまし! 石にかじりついても辰のか
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