右門捕物帖
千柿の鍔
佐々木味津三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)お鷹狩《たかが》り

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大器量人|松平伊豆守《まつだいらいずみのかみ》

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 その第二十番てがらです。
 事の端を発しましたのは、ずっと間をおいて十一月下旬。奇態なもので、寒くなると決まってこがらしが吹く。寒いときに吹く風なんだから、こがらしが吹いたとてなんの不思議もないようなものなんだが、江戸のこがらしとなると奇妙に冷たくて、これがまた名物です。こやつが軒下をカラカラと吹き通るようになると、奇態なものできっと火事がある。寒くて火をよけい使うようになるんだから、火事が起きたとてべつに不思議はないようなもんなんだが、江戸の火事となると奇妙によく燃えて、これがまた名物です。それからいま一つこの季節に名物なのは将軍家のお鷹狩《たかが》り――たいそうもなくけっこうな身分なんだから、将軍家がお鷹狩りをやろうと、どじょうすくいをあそばそうと、べつに
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