」
「大ありじゃ。何をかくそう! 生駒壱岐守《いこまいきのかみ》の行状探らせたは、たれでもない、この古橋専介じゃわ!」
「えッ――」
名人右門はおもわず驚きの声をあげました。讃岐《さぬき》高松の城主生駒壱岐守に、不羈《ふき》不行跡の数々があったために、その所領十七万石を没収されて、出羽《でわ》の由利矢島に配流された事実は、つい最近のことだったからです。
「ふうん、そうでござりましたか! いったい、専介どのは何を探ってまいったのでござります」
「壱岐守が、ご公儀の許しもうけずに、せんだって中高松の居城に手入れをいたせし由、密告せし者があったゆえ、専介めが絵心あるをさいわい、隠密に放って城中の絵図面とらせたところ、ご禁制の防備やぐらを三カ所にも造営せし旨判明したゆえ、生駒家は名だたるご名門じゃが、涙をふるって処罰したのじゃわ」
「それでござりまするな!」
「なに! では、古橋専介をねらいに参ったのは、生駒の浪人どもででもあったと申すか!」
「まず十中八、九、それでござりましょう。ご公儀や御前さまに刃向こうことはなりませぬゆえ、せめても恨みのはしにと、筋違いの古橋どのをねらったに相違ござり
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