ともに、暗かったへやの中には、けはいを知った娘の手によって、あわただしく短檠《たんけい》がともされ、じいじいと陰に悲しく明滅するあかりのもとに、その姿のすべてがパッと浮かび上がりました。――年のころはまだ咲ききらぬつぼみの十五、六歳。少禄《しょうろく》の者らしいが、容姿ふぜいは目ざむるばかり。しかも、それが泣きぬれているだけに、ひとしおの可憐《かれん》をまして、そのういういしさ、あどけなさ、一指を触るればこぼれ散りはしないかと思われるほどの美しさでした。
むろんのことに、押し入った以上、すぐにも尋問が始められるだろうと思われたのに、しかし、いつものあの十八番です。見るような、見ないような目で、じろじろと小娘をながめていましたが、やがてずばり右門流でした。
「そなた、きょう寺参りに行きましたな!」
「えッ――」
というように、ぎょッとなったのを押えてずばり――。
「身にお線香がしみついているは、たしかにその証拠じゃ――。のう、このとおり、どのようなことでも見通すことのできるわしゆえ、隠してはなりませぬぞ。見れば、家人とてはそなたおひとりのようじゃが、墓参りに行ったはお母ごか」
「あい
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