られる金襴地《きんらんじ》の小袋でしたから、発見するや、鋭い声がとんでいきました。
「そりゃなんだッ。おまえがたには分にすぎた腰ぎんちゃくじゃが、どれ見せろッ」
 見とがめられて、ぎょッとしたように必死と両手で押えつけましたものでしたから、いかでわれらの捕物名人が許すべき!――。
「ちっと痛いが、こらえろよ」
 いいつつ、草香流でもぎとってよくよく見ると、こはなんたる奇怪ぞ! プンと鼻を打ったは、線香――、お寺さんで用いる上等の線香のにおいです。
「ほほう、これはどうやらすばらしくおめでたいことになってきたぞ」
 およそここちよげな微笑をもらしもらし、守りぎんちゃくの中を改めていましたが、と――はしなくも現われてきた一通は、次のごとくに書かれた紙片でした。
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「そなたのうれしきあの夜の心尽くし、生々世々忘れまじく候《そうろう》。されど、今は親しくお目にもかかれぬ身、お礼のかわりにこの守り袋お届け候まま、わが身と思うて、たいせつにご所持なさるべく、はよう年季勤めあげて、ご立身なさるよう、陰ながら祈りあげ候。次郎松どの――」
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 読みおろすと同
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