まその賢さならば、右門のおじさんの弟子《でし》になっても、ずんとまにあいそうじゃな。では、それほどおまえがふびんに思うて、日ごろの、お礼心を返す気になった弥吉どんじゃがの、今どこにいるか、その居どころを知っているじゃろうな」
「…………」
「なに? 黙っているところをみると、そればっかりはいえぬというのか。おまえの親切がかえってあだとなって、そのためにこのうちを追われた弥吉どんじゃもの、おまえとてもそのまま黙っているはずはあるまいし、また弥吉どんじゃとて、よし、あだになった親切じゃろうと、うけた親切は親切じゃもの、何かその後おまえと行き来があったと思うが、どうじゃ、おとなしくいってしまえぬか」
「…………」
「ほほう、そればっかりは強情張っているところをみると、なにかまだ大きな隠しごとがあるかもしれぬな」
いいつつ、あの鋭い烱眼《けいがん》で、じろじろ小さな義少年の次郎松を見ながめていましたが、そのとき――ふと名人の目に強く映ったものは、いぶかしや次郎松少年の腰のところに、いとたいせつなもののごとくつりさげられている一個の腰ぎんちゃくでした。それも普通の品ではなくて、ひと目にそれと見
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