るかもしれない。しかし、それも結構である。それでもおたがいの人間が伸び、心が深まり、したがってほんとうの意味で仲のいい愉快な生活がひらけていくなら、命令服従の関係で形だけをととのえていく生活よりははるかに有意義である。要するに、ここの生活は、与えられたある型にはまりこむ生活ではない。あくまでも創る生活である。おたがいに仲よく愉快に暮らしたいという共通の人情に出発して、その人情をできるだけ高く深く生かすような共同の組織とその運営のしかたとを、おたがいの頭と胸と行動とで創り出す生活、そしてその創り出すということに喜びを感ずる生活でなければならないのである。――
「そこで、最後に言っておきたいのは、おたがいに結果をいそいで自分を偽《いつわ》るようなことをしてはならないということである。形のととのった共同生活の姿を一刻も早くつくりあげようとしていいかげんに妥協《だきょう》したり、盲従《もうじゅう》したり、あるいは人任せにしたりすることは、厳につつしまなければならない。めいめいが正直に、生き生きと自分の全能力を発揮《はっき》しつつ、矛盾《むじゅん》衝突《しょうとつ》を克服《こくふく》し、それを全
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