自然に親しもうという計画だった。未明に鉄舟寺を辞すると、まず竜華寺《りゅうげじ》の日の出の富士《ふじ》を仰《あお》ぎ、三保《みほ》の松原《まつばら》で海気を吸い、清水駅から汽車で御殿場《ごてんば》に出て、富士の裾野《すその》を山中|湖畔《こはん》までバスを走らせた。山中湖畔の清渓寮《せいけいりょう》は日本青年館の分館で、全国の青年に親しまれている山小屋風な建物である。ここに旅装《りょそう》をとくと、朝倉先生はみんなに言った。
「自然に親しむには、孤独《こどく》と沈黙《ちんもく》に限るよ。明日ここを出発するまでは、できるだけおたがいにそうした気持ちですごしたいものだね。」
次郎はその言葉をきいた時、何か悲しい気がした。
かれは実を言うと、過去二日半をほとんど孤独と沈黙の中ですごして来ていたのだった。心の中では大河に対して道江の問題を打ちあける機会をたえずねらっていながら、そして一度ならずその機会をつかみながら、ついに言いだしそびれていたかれは、それゆえに他の場合にも、とかく孤独と沈黙に自分自身を追いやっていたわけだったのである。こうして今となっては山中湖畔の半日だけが、かれにとって最
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