よ。ついこないだ読んだ本の中にあったことだが、レドレーとかいう宣教師が中国の西の果てのある土地にはいりこんで、二十年間宣教をしたが一人の信者も得られなかった。ところが、その翌年になってやっと一人の信者ができると、そのあとは年々加速度的にふえていって、今ではその地方の住民がほとんど全部キリスト教徒になってしまっているということだ。私も及《およ》ばずながら、それに学びたいと思っている。実は、白状すると、私もこの話を知るまでは、なかなか決心がつかなかったがね。」
廊下《ろうか》が急にさわがしくなった。講義が中休みになったらしい。やがて小川先生がのっそりはいって来て次郎の横に腰《こし》をおろし、その鈍重《どんじゅう》な眼で、じっとかれの顔を見つめた。次郎はあわてたように立ちあがって、茶を入れはじめた。すると朝倉先生が言った。
「本田君がなかなか納得《なっとく》してくれないので、弱っているところです。」
「そうでしょう。私もまだ納得がいきません。」
小川先生は、ぶすりとこたえて、履歴書のたばを自分のほうにひきよせ、
「ほう、こんなに志願者があったんですか」
次郎は、入れかけていた茶をそのま
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