すか。」
「講演はしない。したいと思っても、おそらくどこでもさせてはくれないだろう。まあ、せいぜい、ここの修了生を中心に、同志の座談会をひらくぐらいなものだね。それも、できるだけ目だたない方法でやらなくてはなるまい。何だか一種の秘密結社みたようになるかもしれないが、しかたがない。しかし、辛抱《しんぼう》づよくつづけていけば、将来の国民生活の底力《そこぢから》にはなるよ。目だたない底力にね。」
 次郎は雲をつかむようで心ぼそい気がした。五百名の修了生があると言っても、それは全国に散らばれば無にひとしい勢力である。それに、そのなかの何人が、そうした運動に真剣《しんけん》に協力してくれるか、それも心もとない。これは朝倉先生の自己|慰安《いあん》にすぎないのではないか、とも思った。
「不賛成かね。」
 朝倉先生は、次郎の気持ちを見透《みすか》すように、微笑《びしょう》しながら言った。
「ええ――」
 と、次郎がなま返事をすると、朝倉先生はその澄《す》んだ眼を射るように光らせながら、
「君は、一粒《ひとつぶ》の種をまく、という言葉を知っているだろう。ほんとうの仕事はその一粒からはじまるものなんだ
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