も明るい人なら、さっきいった悪の勝利でさえ信じているものは一人もないらしい。それにもかかわらず、現在の勢いを阻止《そし》できないというのは、いかにも残念だ。田沼先生もそれで非常に苦しんでいられる。むろんああいう方だから、最後まで努力はつづけられるだろう。しかし、青年指導について、せんだって私にもらされたご意見から察すると、やはり大勢《たいせい》はどうにもならないらしいね。」
「青年指導についての田沼先生のご意見といいますと?」
「勢いを阻止するための指導よりは、最悪の事態を迎《むか》えるための指導が今ではたいせつだ、とおっしゃるんだ。」
「つまり、先生がさっきおっしゃったように、愛情を育てるということなんですね。」
「そうだ。目あきもめくらもいっしょになって地獄《じごく》に飛びこむのが運命だとすれば、その運命をおそれてじたばたするより、その運命の中で生きて行けるたしかな道を求めるほうが賢明《けんめい》だというお考えなんだ。むろんこれは一般《いっぱん》の国民についてのお考えで、先生ご自身としては、まだ決してあきらめてはいられない。おそらく今もどこかで血の出るような努力をつづけていられるこ
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