だ一つの道だ。愛情を失っては、そのほかのどんなことに成功しても何の役にも立たない。」
「愛情だって、日本が破滅したら、何の役にも立たないでしょう。」
「愛情はあらゆる運命をこえて生きる。それは破滅の悲劇にたえて行く力でもあり、破滅の後の再建を可能にする力でもあるんだ。人間の社会では、愛情だけがほんとうの力なんだよ。それさえあれば無からでも出発ができるし、反対に、それがなくては、あらゆる好条件がかえって破滅の原因にさえなるんだ。」
 次郎はまた考えこんだ。首をたれ、顔色が青ざめ、眼が凍《こお》ったように光っていた。かれはその眼をそろそろとあげ、じっと朝倉先生を見つめながら、
「先生は、すると、日本の破滅はもう必至だとお考えですか。」
「必至? それはわからない。悪の勝利ということもあるのだからね。しかし、かりにそれで一時的に破滅をまぬがれても、むろん安心はできないだろう。悪の勝利は決して、永遠ではないんだ。」
「そういう意味では、やはり必至だとお考えですね。」
 朝倉先生は沈痛《ちんつう》な眼をして、
「実は、これは田沼先生にうかがったことだが、現在の上層部の人たちで、世界の事情に少しで
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