「ぼくにも、先生が愛情をたいせつたいせつにされるお気持ちはよくわかります。しかし愛情の表現をどうするかということについては、問題があると思うんです。先生のように、周囲にとけこんで摩擦を起こさないようにすることに、あまり重きをおきすぎると、修了生たちだって、結局は時代に流されるよりほかないじゃありませんか。」
「ある点では、――いや形の上ではすべての点で、そうなっていくかもしれないね。しかし、時代に流されながらも愛情だけはたいせつに育てていくということを忘れない点で、ただやたらに叱咤《しった》激励《げきれい》する連中とは根本的にちがっているよ。」
「しかし、そんなことが日本の破滅《はめつ》を救うのに何の役に立ちますか。」
「少しは役にたつかもしれないし、あるいは全く役にたたないかもしれない。今の形勢では役にたたないといったほうが本当だろうね。」
「先生!」
 次郎は激昂《げきこう》して、
「ぼくたちは、これまで、日本の破滅をくいとめるために戦って来たんじゃありませんか。」
「むろんそうだ。」
「そんなら、それに役だつ方何に少しでも努力したらどうです。」
「今は愛情を育てることだけが、た
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