いじゃありませんか。」
「むろん、友愛塾があるにこしたことはない。しかし、それがつぶれたからといって、何もかもおしまいになるというわけのものでもあるまい。全国には塾の修了生がもう五百名近くも散らばっているし、私は、これからは、むしろわれわれの精神をよく理解した修了生たちに事情を訴《うった》えて、各地でこれまで以上に友愛運動を展開してもらいたいと思っているんだ。」
「しかし、そういう人たちも、これからは孤立するんじゃありますまいか。」
「友愛塾の修了者だという理由で?」
「ええ。」
「まさか。……もっとも、その人たちが友愛塾の旗をふりまわすといったふうであれば、その心配もあるだろう。しかしほんとうに塾の精神がわかっているかぎり、そんなばかなまねはしないよ。結局は周囲にとけこんでいく実際の生活がものを言うさ。」
 次郎は考えこんだ。考えれば考えるほど、朝倉先生が敗北主義者になったような気がして腹がたって来た。かれは、もう何もいわないで塾長室を出ようかと思った。しかし、ながい間の先生に対する信頼感《しんらいかん》がかれにそれをためらわせた。
 かなりたって、かれはいくぶん皮肉な調子で言った。
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