私たちが大衆青年に求めているのは、まず何よりも愛情だよ。愛情に出発した創造と調和の精神だよ。」
「それはわかっています。しかし、今のような時代では、その愛情はまず反抗の精神となってあらわれるのが当然でしょう。それでこそ、ほんとうの意味での創造と調和とが期待されるんじゃありますまいか。」
「それはその通りだ。だからこそ軍部ににらまれるような友愛塾も生まれたんだ。しかし、そういうことをただちに個々の大衆青年に求めるのは大きな冒険《ぼうけん》だよ。大衆青年というものは、どんなに思慮《しりょ》があるように思えても、いったん反抗の精神にかりたてられると、どこにいくかわからないし、たいていの場合、破壊《はかい》に終わるものだからね。それでは世の中はちっともよくならない。青年自身としても不幸になるだけだ。」
「すると、流されるままに放っとくほうがいいとおっしゃるんですか。」
「そう言われるとつらいが、それもしかたがない。やはり時勢には勝てないよ。今は無益な摩擦《まさつ》の原因を作るより、なごやかな愛情を育てるために、できるだけの手段を講ずべきだね。」
「その手段も、友愛塾をつぶしてしまっては、おしま
前へ 次へ
全436ページ中404ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
下村 湖人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング