ないと言うんだね。」
「そうです。」
「なるほど。君の言うことはよくわかる。友愛塾をつぶさないためには、成功するかしないかは別として、いちおう手紙を出して見るのも一策《いっさく》だろう。しかし、そうして集まって来た青年たちは、気の毒なことになるね。」
「どうしてです。」
「おそらく村や町の生活から孤立《こりつ》することになるだろう。どうかすると、非国民のレッテルをはられることになるかもしれない。少なくとも公然と何かの役割を果たすことができなくなるのはたしかだよ。」
 次郎は、机の一点を見つめて、ちょっと考えたあと、
「しかし、そうなればそれでもいいんじゃありませんか。どうせ友愛塾の運動は時代への反抗《はんこう》でしょう。今の時勢では、正しいものが孤立するのはむしろ当然ですし、それでこそかえって大きな役割が果たせるとも言えると思うんです。」
「時代への反抗、なるほどね。――」
 と朝倉先生は眼をつぶった。そしてしばらく額をなでていたが、
「なるほど友愛塾の精神は、今の時代では一種の反抗精神だと言えるね。しかし、田沼先生も私も、大衆青年を反抗の精神にかりたてるつもりは毛頭《もうとう》ない。
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