る。
「おどろいたかね。」
 と、朝倉先生はさびしく笑いながら、今度は一通の封書《ふうしょ》を、同じ引き出しから取り出して、
「あらましの事情は、これを見ればわかる。君にはなるだけ心配をかけまいと思っていたが、もうかくしておいてもしかたがない。読んでみるがいい。」
 次郎は封書を受け取ると、まず発信人の名を見た。杉山悦男《すぎやまえつお》とあった。杉山は現在文部省の社会教育課に籍《せき》をおいて、主として青年教育の事務を担当している人だが、かつての朝倉先生の教え子で、田沼《たぬま》先生とも近づきがあり、自然友愛塾にもしばしば出入りして次郎ともかなり親しい仲になっていた。次郎はある信頼感《しんらいかん》を抱《いだ》いて手紙をよんだ。
 手紙の文面はさほど長いものではなかった。
「……小生としては、立場上、くわしい事情を述べる自由も有しませんし、また述べても今さら何の役にもたつことではなく、単に先生のお気持ちを損《そこな》うだけにすぎないと思いますのでそれは省略いたしますが、とにかく、各府県の社会教育課の青年ないし青年団の方針が、今後はいっそう片寄ったものになるにちがいありません。ことに幹
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