かい》そうだったじゃないか。やはり地区別の話し合いは、それだけ効果的だったと思うね。」
「そういえば、食後には、催促《さいそく》されてもふしぎにだれも理屈を言いだすものがなかったね。ひる間の意気込《いきご》みとはまるでちがっているんで、あの時はぼくも意外だったよ。」
「すると、やはり多少は考えたかな。」
「考えたんじゃないよ。本能だよ。」
と、大河無門が口をはさんだ。
「あの連中だって、つけ焼《や》き刃《ば》の理屈をならべるよりか、りんごを食ったり、歌をうたったりするほうが実はおもしろいんだよ。ふふふ。」
それから朝倉先生のほうを向いて、
「今日、ぼくたちの班で話しあってみたかぎりでは、あの連中の生活には、自然で大っぴらな楽しみというものがまるでないらしいんです。やるべき時に、しっかりやりさえすれば、そのほかの時のずぼらは大目に見てもらえるんだから、それで取りかえしがつく、なんて平気で言う者がありましてね。それをきいていて、ぼくは、気の毒になってしまいました。」
朝倉先生はただうなずいたきりだった。すると塾生同士がまた話し出した。
「最後にどんな気持ちになって帰って行ったかな。」
前へ
次へ
全436ページ中394ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
下村 湖人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング