珍《めずら》しい、豪華《ごうか》な洋なまなどを盛《も》った菓子鉢《かしばち》がおいてあったが、それも朝倉先生が一つつまんだきりだった。小関氏は、朝倉夫人がたびたび茶を入れかえにはいって来て、そのたびごとにすすめても、見向こうともしなかったのである。
二人の沈黙は、それでも、初めの三四十分間は、さほど息苦しいものではなかった。というのは、地域別にわかれた双方の塾生たちが、塾内をくわしく見てまわるのには、少くともそのぐらいの時間が必要だったし、そしてその間は廊下《ろうか》にはたえずさわがしい人声と足音がきこえ、塾長室の戸がひらかれて、中をのぞきこまれることさえたびたびだったからである。
しかしそのさわぎが治まって、塾生たちがそれぞれ割りあてられた室に落ちついてしまうと、ちょうど、音をたててぶっつかりあっていた浮氷《ふひょう》が急に一つの氷原にかたまったような沈黙が支配した。それはごまかしのきかない沈黙だった。二人はめいめいにテーブルの上にあった新刊の雑誌にでも眼をとおすよりしかたがなかった。
そのうちに、小関氏はひょいと立ちあがって、一人で室を出た。便所にでも行ったのか、と朝倉先生は
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