と、小関氏がいきりたった調子で何か言おうとした。が、それより早く、荒田老の、さびをふくんだ、恫喝《どうかつ》するような声がきこえた。
「小関さん、もう問答は無用です。」
 荒田老は、そう言って、数秒の間その黒眼鏡をとおして二人のほうに眼をすえているようだったが、
「朝倉さん、あんたはせっせと小理屈《こりくつ》のいえる青年をお育てになるほうがよかろう。じゃが、言っておきますが、あんたのお育てになるような青年は、もう日本には用がありませんぞ。これからの日本に役にたつのは、理屈なしに死ねる青年だけですからな。」
 それから、すぐ横につきそっていた鈴田《すずた》のほうを向いて、
「どうれ、帰ろうか。せっかく来たが、もう用はない。」
 鈴田はじろりと朝倉先生を横目で見たあと、荒田老の手をひいて、自動車のほうにあるき出した。
 もうその時には、双方の塾生たちは地区別にわかれてほうぼうに散っていた。あとには、朝倉先生夫妻と小関氏と次郎の四人だけが立っていたが、朝倉先生が、
「お帰りですか。」
 と荒田老のあとを追うと、ほかの三人も、だまってそのあとにつづいた。
 自動車の扉《とびら》がしまるまえ
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