そのあと、かれがふたたびもとの厳粛さと熱烈さをとりもどしたことは言うまでもない。それは、しかし、必ずしも草稿にたよれるという安心ができたからばかりではなかったらしい。というのは、かれの演説は決して単なる朗読《ろうどく》演説ではなく、一つの句切りの最初の言葉さえ見つかれば、あとの数行は草稿なしでも自然に口をついて流れ出て来たし、そのあいだに、かれはかれの予定通りの厳粛さと熱烈さとを十分に発揮《はっき》することができたからである。ただかれのために残念だったのは、かれの前にテーブルが据《す》えてなかったことであった。もしそれさえあったら、かれはもっと巧《たく》みに草稿に眼を走らせることができたであろうし、またしたがってかれの演説はいっそう雄渾《ゆうこん》であることができたかもしれなかったのである。
かれは最後に、草稿をにぎった左手を腰のうしろにまわし、右手で力一ぱい空間をたたきつけながら言った。
「諸君、お互《たが》いの修練の場所はちがっても、等しくこれ日本の青年であります。日本の青年である以上、修錬の目的とするところは全く同一《どういつ》でなければなりません。その意味で、諸君がすでにわ
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