車は、もうその時には、二人のすぐ前まで来ていたが、通りすぎたかと思うと、すぐとまった。そして、その中から出て来たのは、鈴田《すずた》に手をひかれた荒田老《あらたろう》だった。
「あっ、荒田さんでしたか。ようこそ。……あなたがお出《い》でになることは全く存じがけなかったものですから、どなたのお車かと思っていました。」
と、朝倉先生が歩みよりながら声をかけた。
荒田老は、和服の上にマントをひっかけ、毛皮製のスキー帽《ぼう》みたようなものをかぶっていたが、帽子には手もかけず、
「やあ、塾長《じゅくちょう》さんですか。」
と、黒眼鏡を朝倉先生の声のするほうに向け、
「今日は、しばらくぶりで、わしも見学にあがりましたんじゃ。まだ興国塾からは見えませんかな。」
「一時に到着《とうちゃく》という約束になっていますので、もうすぐ、見えるでしょう。」
そう言っているうちに、正門の外から、「歩調取れ」というかん高い号令の声がきこえ、つづいて、カーキー色の服を着た一隊の青年が、ももを高くあげ、手を大きく前後にふりながら、堂々と門をはいって来た。
それを見ると、こちらの塾生たちは、ほうぼうから急いで
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