先生は良寛和尚《りょうかんおしょう》を思わせるような風格の人で、その言葉や動作の中に作為《さくい》のないユーモアがあふれ、それが話の内容にぴったりしていて、この日の講義としては、あつらえ向きだった。
中食後の座談がすむと、民芸に特別の関心を有する二三の塾生が小西先生の帰りを見おくって、門のあたりまでついて行った。そのほかの塾生たちも、そのあとから、ぞろぞろと塾庭に出て、三人五人と、草っ原に腰《こし》をおろしたり、森をぶらついたりしていた。その光景は、いかにものんびりしていた。今日のお客を迎《むか》える前にしてはのんきすぎるようにも思えたが、これも実は次郎と大河とが組んだプログラムの中の、かくれた一コマだったのである。
一時ちょっと前になると、朝倉先生夫妻も塾庭に姿をあらわした。それとほとんど同時に、自家用車らしい黒塗《くろぬ》りの自動車が一台、正門をすべりこんで来るのが見えた。みんなの眼《め》は、自然そのほうにひかれた。中でも次郎の眼がぎらりと光った。かれはその時、草っ原に腰をおろしていた仲間の一人だったが、いきなり立ちあがって、朝倉先生のほうに走って行き、何かささやいた。
自動
前へ
次へ
全436ページ中373ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
下村 湖人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング