がないせいもあって、あからさまにそれを口に出していうものも決してまれではなかった。それがいっそう次郎をなやました。かれは自分自身の闘志にたえずなやまされつつ、その同じ闘志が他の塾生たちの心にきざすのを注意ぶかく警戒《けいかい》していなければならなかったのである。
そのために、かれはもうこれまでのように、ひまさえあると自分の室にばかりとじこもっているというわけにはいかなかった。かれは塾生たちの気持ちの動きを知るために、かれらとの個人的|接触《せっしょく》の機会をできるだけ多くすることにつとめなければならなかった。このことは、自然かれをいくらか饒舌《じょうぜつ》にし、一見いかにも快活らしく見せた。しかし、それが見かけだけのものであったことは、かれ自身が一ばんよく知っていたのである。
こうして、ついに約束《やくそく》の土曜日が来た。天気は快晴というほどではなかったが、この季節の武蔵野《むさしの》にしては、風も静かで、割合あたたかい日だった。準備は昨夜までにすっかりととのっていたので、塾生たちの気分には十分のゆとりがあり、午前中は、外来講師小西先生の民芸に関する講義も落ちついてきいた。小西
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