あった。その手に乗ってはならない。かといって、その申し入れを無視するわけにも行かない。そこに二人の苦心があったのである。だが、これは大河の提案によってあんがい簡単に片づいた。それは八つの室に分散して地方別の懇談会《こんだんかい》を開き、それにできるだけ多くの時間を費すことであった。大河は言った。
「小人数にわかれると肩肘《かたひじ》張った演説もできまいし、それに地方別ということが、自然話題を地についたものにするだろうと思います。そうなると、こちらの生活のほんとうの意味が、先方の人たちにもいくらか納得《なっとく》してもらえるかもしれません。」
 このことがきまると、あとはわけはなかった。二人は中食前にだいたいの案を朝倉先生に報告することができた。朝倉先生は一通り案に目を通すと、笑いながら言った。
「地方別懇談会とはうまく考えたね。先方では裏をかかれたと思うかもしれないが、文句をつけるわけにはいくまい。まあ、名案としておこう。」
 それから、しばらく何か考えていたが、
「しかし、こういう細工をやるのは、あまり愉快《ゆかい》なことではないね。」
 その日、塾生たちが外出から帰って来て夕食をす
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