を次郎にすえながら、
「このごろ空林庵のほうはすっかりお見かぎりのようね。でも、今日はぜひいらっしていただかなければなりませんわ。」
次郎がいくぶん顔をあからめながら、眼を見はっていると、
「今日は、先生と三人で重大会議を開かなければなりませんの。」
「重大会議? 何でしょう。」
朝倉夫人は、やはり微笑したまま、それにはこたえず、
「もし大河さんが外出していらっしゃらなかったら、次郎さんとごいっしょに、ご相談に加わっていただきたいんですって。だけど、いらっしゃるかしら。」
「さあ。」
次郎は大河の名が出たので、いよいよまごついた。「さあ」というかれの返事は狼狽《ろうばい》の表現でしかなかったのである。
「じゃあ、ちょっとお室《へや》をのぞいてみてくださらない? そして、もしいらしったらすぐごいっしょに空林庵のほうにおいでくださいね。」
朝倉夫人は、そう言って、いそいで玄関を出て行った。
次郎は、考える余裕《よゆう》もなく、すぐ第五室に行って戸をノックした。
「はあい。」
にぶい大河の返事がきこえた。戸をあけると、大河は坐禅《ざぜん》でも組んでいたかのように、背筋《せすじ》を
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