心配あそばしていることでしょう。恥ずかしいことですが、私には、それさえ今はよそごとのような気がしてなりません。お笑いくださいませ。」
次郎は読み終わったあと、しばらくは化石したようにすわっていた。胸の中には、熱いとも冷たいともしれないものが、激《はげ》しい渦《うず》を巻いてその突破口《とっぱこう》を求めていた。
(何という醜《みにく》い一途《いちず》な執念深《しゅうねんぶか》さだろう。そして、何という落ちつきはらった我ままな要求だろう。愛情の対象として完全に自分を無視しておきながら、道江は一たいどんな返事を自分に期待しようというのだ。)
そう思うと、かれはにえるような怒りを感じた。
しかし、道江の執念を醜いと思う心は、すぐかれ自身にもはねかえってきた。
(道江に何の罪がある。道江はただ自分を信じてすべてを自分に訴えているだけなのだ。それを醜いと思う心こそ、何にもまして醜い心ではないか。我執《がしゅう》と自負と虚偽《きょぎ》とのわな[#「わな」に傍点]にかかって身もだえしている嫉妬心の亡者《もうじゃ》、それ以外に今の自分に何が残されているというのだ。)
憎悪《ぞうお》と自責とが恋
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