せんでした。それは前にも書いた通りです。しかしいろいろ考えていますうちに、すべてのことをはっきり知った上でありませんと、自分の進む道も見つからないだろうということに思いあたったのです。それで、今では一ときも早くその方のお名前を知りたいと思っていますが、父はなぜか、どうしてもそれを私に教えてくれません。何度かたずねてみましたけれど、いつもむずかしい顔をして、お前は知らないほうがいい、と答えるだけなのです。私自身では、恭一さんにどんなお友だちがおありなのか、それさえわかっていませんので、見当をつけようにもつけようがありません。もっとも、大沢《おおさわ》さんという方には上京中二三度お目にかかり、一度は恭一さんと三人で映画を見に行ったこともありましたので、あるいはあの方かとも思ってみました。しかし、お見うけしたところ、二度や三度顔を見たばかりの女に心を動かすような、そんな軽薄《けいはく》な方だとも思えませんし、そう疑ってみるだけでも失礼なような気がいたします。恭一さんだって、そんな軽薄な人を私におすすめくださるほど、私に対して不親切ではないでしょう。私は、私の希望に根をはやすために、せめてそれ
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