ころではなかった。心のどこかにまだかすかに残っていたぬくもりが、すっとぬぐい去られたような気がしながら、いそいでつぎの行に眼を走らせた。つぎの行は、次郎にとって、いっそう残酷だった。
「しかし、次郎さん、これは決して私の感傷ではありません。なるほど、根のない花を、根のないままに胸にさして一生を終わるなどと申しますと、いかにもため息まじりの感傷にすぎないかのようにきこえるかもしれませんが、私はそういうことをただあきらめの気持ちで申しているのではないのです。私は弱い女ながらもやはり一人の人間として生きております。人間には意志があります。意志は、それにふさわしい知恵と情熱との助けをかりることさえできれば、根のない希望に根をはやすことだってできると信ずるのです。私はこのことを挿木《さしき》のことから思いつきました。次郎さんも、まだきっとお忘れではないと思いますが、何年か前の梅雨《つゆ》のころに、私と二人で、お宅の畑にいろんな木を挿木にしてみて、それがたいてい成功したので大喜びをしたことがありましたね。私、今度のことで思いなやんでいるうちに、ふとそのことを思い出したのです。それを思い出すと、私の
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