常に複雑だった。まず第一に、かれは恭一のやり方がきわめて愚劣《ぐれつ》であり、自分に対するこの上もない侮辱《ぶじょく》であると思った。自分が道江を思っていることは、道江の父にはもうはっきりわかっているにちがいない。それがまだ道江にはわかっていないとしても、いつかは彼女《かのじょ》の耳にもはいるだろう。その時の道江の顔を想像しただけでも、身がちぢむような気がするのだった。しかし、また一方では、道江が、「お友だちの名をたずねてみる気にもならなかった」と書いているのには、ある怒《いか》りを感じないではいられなかった。これが死ぬほど自分を愛している者に対する態度だろうか。かりに彼女の父があからさまに真実を語ったとしたらどうだろう。それでも彼女はそうした冷淡《れいたん》な態度に出られるのだろうか。もし出られるとすると、彼女にとって自分は一たい何なのだ。いや自分にとって彼女は一たい何なのだ。――そこまで考えると、恭一のやり方の愚劣さに対する怒りは、その底に、自分で意識しない嫉妬《しっと》の感情を波うたせて、いよいよ昂《こう》じて行くのであった。
 かれは、しかし、懸命《けんめい》に自分を落ちつけて
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