はいつも親切で、二人の将来の家庭生活の夢《ゆめ》を語るというようなことこそなかったが、思想・文芸などの話から、かなり突《つ》っこんだ人生問題などにふれたこともあり、道江は最後まで何か新鮮《しんせん》な明るい光につつまれたような気持ちで日を過ごした。ただ、退京の前夜、恭一が宿にたずねて来て、荷造りをしている道江をあとに残し、父だけを誘《さそ》って外に出たが、二時間あまりもたって帰って来た父が、いやに考えぶかそうな顔をしており、口もあまりきかなかったので、それが道江にはちょっと気になった。しかし、翌日、東京駅に見おくってくれた恭一は、道江に対しては、これまでと全く変わりはなかった。ただ、父とのあいだは何かしら気まずそうで、気のせいか、あいさつもぎごちなく思われた――。
「私はそれでいよいよ気がかりになりましたが、それでも、それが私自身の問題に関係のあることだとは夢にも思っていませんでした。ところが、列車が静岡をすぎたころになって、それまで眼をつぶってばかりいて、ほとんど口をきかなかった父が、だしぬけに、お前はこれまで恭一君といっしょになるつもりでいたんだろうね、とたずねるのです。それがあん
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