すみにはならないだろうと信じます。」
 次郎は、こうした理詰《りづ》めの言葉がつづけばつづくほど、かえって道江の苦悩《くのう》の深さを感じた。一心不乱になって色青ざめている額の下から、二つの眼がじっと自分のほうを見つめているような気さえするのだった。
「しかし、何という愚《おろ》かな私だったことでしょう。私はこれまで、私の希望をつなぐために何よりもかんじんな、というよりは、それを忘れては何もかもが空になるような、ただ一つのよりどころを、私自身ではっきりたしかめることを忘れていたのです。私はながい間、いわば根のない希望の花を胸にさして、水だけを周囲の人たちに注いでもらっていたようなものでした。そのことをはっきり知らされたのは、ついこないだ上京して帰りの汽車の中だったのです。」
 そのあと、道江の手紙は、上京から退京までのことをかなりこまかに記していたが、それを要約すると、――
 道江は幸福に胸をふくらまして上京した。そして滞在中《たいざいちゅう》は、父が用事で忙《いそが》しかったために、たいていは恭一の案内で見物や買い物に出かけ、その間に、二人きりで食事をすることもまれではなかった。恭一
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