あらたまってそれを私に言って聞かしてくれた人はだれもありませんので、全く私の思いちがいだったのかもしれません。もしそうだとすると、私の軽はずみを恥《は》じるほかないような気がいたします。しかし、これは次郎さんもたぶんおわかりくださることだろうと思いますが、親類中が、私にそう信じこませるような空気を作っていたことも事実だと思います。私は、自分の家にいても、大巻《おおまき》の姉の家や次郎さんのお家をおたずねしても、何かにつけ、そうとしか思えないようなことを耳にして、よく顔をあからめたものでした。その中には、だれがどんな場合にどういうことを言ったのかさえ、今でもはっきり思い出せるものも少なくはないのです。女というものは、そういうことについては男よりずっと敏感《びんかん》だということを次郎さんがお認めくださるなら、私が恭一さんと許婚の間柄だと信じこんでいたのも無理はない、とお許しいただけるのではありますまいか。そしてそれをお許しいただけますなら、私が恭一さんをお慕《した》い申しあげる気持ちがそのために日に日に深まっていって、今ではそれだけが私の生きる力になっている、と申しあげても、きっとおさげ
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