上で、思いきって書くことにいたしました。どうか私のこの気持ちをお察しくだすって、おいやでも、読むだけは、最後までお読みくださるよう、切に切にお願い申します。」
 この書き出しを見ただけで、次郎はもう、道江がこれから自分に訴えようとする問題の中心が何であるかを想像し、自分がその問題について第三者的立場に立たされていることを、はっきり意識した。それはにがい、そして冷たい味のする意識だった。封を切る時に、かすかながらもある期待をかけていた自分の甘《あま》さに対する自嘲《じちょう》が、そのにがさと冷たさとを倍加した。かれの眼は、しかし、そうであればあるほど鋭《するど》く手紙の上に光っていた。
 手紙の文句はふしぎなほどの冷静さをもってつづられていた。次郎はかつて道江を平凡《へいぼん》な女だと思ったことがあったが、読んで行くうちに、その平凡さのおどろくべき成長を見せつけられ、それに一種の威圧《いあつ》をさえ感ずるのだった。
「……実は私は、女学校を卒業前後から、いつとはなしに、恭一《きょういち》さんと私とは許婚《いいなずけ》の間柄《あいだがら》だとばかり信じて来ました。今になって考えて見ますと、
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