焼きすてようと思ってみただけで、焼きすてたあとに感ずるであろう不安が、現在の不安以上の力をもってかれにせまって来るのだった。かれは封書を前にしたままながいこと迷った。迷えば迷うほど、一方では自分のふがいなさが感じられて、腹だたしくも悲しくもなった。かれは何かにしがみつきたい気持ちだった、そして、いつの間にか、「歎異抄《たんにしょう》」の中のいろいろの言葉を心の中でくりかえしていた。くりかえしているうちに、
(そうだ、自分の「はからひ」なんか、なんの力にもなるものではない。)
と、そんな考えが自然にかれの頭をかすめた。この場合、それは実は、かれ自身に対する言いわけ以上のものではなかったのかもしれない。しかし、それでも一つの救いであったにはちがいなかった。かれはとうとう思いきって封を切った。
手紙には、帰郷のあいさつらしい文句はどこにもなく、最初から次郎を息づまらせるような言葉ではじまっていた。
「こんなお手紙を差しあげては、次郎さんはきっと私を軽蔑《けいべつ》なさるだろうと思いますけれど、次郎さんよりほかに、今の私の気持ちを訴えるところがありませんから、軽蔑されるのを覚悟《かくご》の
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