、次郎は、その後、そのことについていっそうきびしい試練にあわなければならなかった。しかも、その試練は東京の事変が塾内の空気を不安の絶頂にかりたてていた二月二十八日の夕方にはじまったのである。かれは、その日、夕食をすまして自室にかえると、机の上に一通の分厚な封書《ふうしょ》を発見した。かれは、その発信人が道江であることを知った瞬間《しゅんかん》、おどろくというよりは、むしろ恐怖《きょうふ》に似た感じで胸をふるわした。かれには、すぐには封を切る勇気が出なかった。もしもそれが一枚のはがきに帰郷を報じて来たものにすぎなかったとしたら、かれはただ寂《さび》しい気持ちでそれを読みすてたかもしれなかった。また封書ではあっても、それがわずか二三枚の便箋《びんせん》に書かれたものであったとしたら、かれはその中から何か言外の意味を探ろうとして、くりかえし読んでみたかもしれなかった。だが、それはあまりにも分厚であり、分厚であるというそのことが、内容を想像してみるまえに、ただわけもなくかれを不安にしたのである。
かれは封を切らないままで焼きすてようかと、何度か思ってみた。しかし、それははかない努力であった。
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