ちおうの落ちつきを見せた。叛乱兵は、一二の下士官をのぞき、二十九日の午後それぞれ原隊に復帰し、首謀者《しゅぼうしゃ》将校のうち数名は自決、その他は検束《けんそく》されて、ともかくも事件はいちおう終わったのである。
事変中、塾堂の諸行事の運営が、時間的にも内容的にも、目だつほどの狂《くる》いを見せたことは、幸いにして一度もなかったが、気分の波が常にそれに作用していたことは、さすがに見のがせないものがあった。しかし、その波も事変がすぎてみると、たいしてながくあとをひくというほどではなかった。月があらたまるとともに、むしろ台風一過の感さえあった。事変後の国内諸状勢の深刻さは、まだ多くの塾生たちの関心のそとにあったのである。
田川大作は意気|銷沈《しょうちん》の姿であり、何事についてもほとんど発言しなくなっていた。飯島好造は相変わらず多弁で、とかく話題を政治に向けがちだったが、その興味の中心は後継《こうけい》内閣《ないかく》の顔ぶれといったことにあるらしかった。またしばしば叛乱将校の個人に関する噂話《うわさばなし》などを、何かにつけやりだしたり、口ぎたなくかれらの罪状に追い討《う》ちをかけ
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