。そしてそこに現われたのが、大河無門という、すばらしい人物だったのである。
 かれは大河との初対面から、すでにある程度のひけ目を感じていたが、それは塾生活の進展とともに、いよいよ深まるばかりであった。それに拍車《はくしゃ》をかけたのが、道江の来訪と、それにつづく恭一との手紙のやりとりの間に感じた心の動揺《どうよう》であった。そして最後に、東京の異変がおとずれたが、この異変をめぐっての、かれ自身の態度と大河の態度との、あまりにも大きなちがいに気がついたとき、かれはこれまでの自信をほとんど完全に打ちくだかれてしまったのである。
 これが、おそらく、その晩の研究会で、かれが沈黙に終始した大きな理由であったにちがいないのである。

   一一 混迷《こんめい》

 翌日から塾生《じゅくせい》たちは、毎朝、ラジオと新聞の大きな活字によって、あらためて大きな興奮にまきこまれた。ラジオは事務室に備えつけてあり、ふだんはゆっくり聞く時間がないので、めったにスウィッチを入れたこともなかったが、事変以来は、きまった行事の時間でないかぎり、ほとんどかけっぱなしの有様だった。
 何といっても、最も刺激的《しげ
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