った。塾生たちがその時間を、異変の話についやしたのはいうまでもない。どの室からも興奮した声がひっきりなしに流れた。
一方、塾長室では、小川先生と朝倉夫人に朝倉先生と次郎とが加わって、ひそひそと話しあいをはじめた。話は、しかし事変そのもののことよりも、事変が塾に及《およ》ぼす影響《えいきょう》についてのことが多かった。
小川先生は言った。
「さきほど玄関口で理事長からちょっとおききしたところでは、荒田さんが変なことを思いついているらしいですよ。」
「変なこと? 何でしょう。」
と、朝倉先生が眼を見はると、
「全国の私設の青年指導機関の連合組織を作ってはどうか、というんだそうです。」
「それで思想を統制しようとでもいうんですか。」
「むろん、そうでしょう。表面は連絡《れんらく》提携《てけい》とか、共励《きょうれい》切瑳《せっさ》とかうたうでしょうが。」
「そんなこと、急に思いついたんでしょうか。これまで私はまだ一度も耳にしたことがありませんが。」
「さあ、それはわかりません。理事長もさっきの電話ではじめてきかれたらしいんです。何でも、荒田さんは、今度のような事件がおこるのも、国民の
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