より片付くべし。しかせずして手重きところにかかり、時日を費す時は、僅《わず》かの畝歩《せぶ》のために、総体の田畑順々手入れおくれて、大なる損となるなり。国家を興復するもまたこの理なり。知らずんばあるべからず。また山林を開拓《かいたく》するに、大なる木の根はそのままさしおきて、まわりを切り開くべし。而して二三年を経《へ》れば、木の根おのづから朽《く》ちて、力を入れずして取るるなり。これを開拓の時、一時に掘《ほ》り取らんとする時は労して功少なし。百事その如し。村里を興復せんとすれば必ず反抗《はんこう》する者あり。これを処するまたこの理なり。決して拘《かかわ》るべからず、障《さわ》るべからず。度外に置きてわが勤めを励《はげ》むべし。」
[#ここで字下げ終わり]
 ぼそぼそと読み出した大河無門の声は、おわりに近づくにつれて、次第に高くなり、澄んで来た。そして最後の一句を、思い切り張った調子で読みおわると、また、ぼそぼそとした声で言った。
「さっき田沼先生に事件のお話をきいたあとで、ページをめくっていると、偶然《ぐうぜん》この一節が眼にとまりました。何だか関係があるような気がしたので読んでみたん
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