は、それが大河の声であるということだけで、もう十分な刺激だった。しかも、その大河は、これまで読書会ではほとんど沈黙を守りつづけて来ており、真《ま》っ先《さき》に口をきったことなど、全くなかった人なのである。
 みんなが、あわててページをひらくと、大河は、ぼそぼそと読み出した。
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「翁|曰《いわ》く、何事にも変通といふ事あり。知らずんばあるべからず。即《すなわ》ち権道《けんどう》なり。夫《そ》れ難《かた》きを先にするは聖人の教へなれども、これは先づ仕事を先にして而《しか》して後に賃金を取れと云ふが如《ごと》き教へなり。ここに農家病人等ありて、耕し耘《くさぎ》り手おくれなどの時、草多きところを先にするは世上の常なれど、右様の時に限りて、草少なく至って手易き畑より手入れして、至って草多きところは最後にすべし。これ最も大切の事なり。至って草多く手重のところを先にする時は、大いに手間取れ、その間に草少なき畑も、みな一面草になりて、いづれも手おくれになるものなれば、草多く手重き畑は、五|畝《せ》や八畝は荒《あら》すともままよと覚悟して、しばらく捨ておき、草少なく手軽なるところ
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