うです。それをはっきり口に出したら、それだけで、最悪の事態におちいるかもしれません。今朝の状勢では、そうとしか思えませんでした。今度の場合は、しかし、何としてもそれに妥協《だきょう》するわけには行かないと思います。友愛塾が、そのために犠牲《ぎせい》になっても、いたし方ないでしょう。身を焼いて灰からよみがえるという不死鳥の覚悟をしようじゃありませんか。」
 小川先生は、大きな息をして眼をつぶった。そして眼をつぶったまま、ひとりごとのように言った。
「惜《お》しい、実に惜しい。こういう塾こそ今の時代の良心なんですがね。」
「その良心を守ろうというんです。ははは。」
 と、田沼先生は快活に笑った。
 次郎は小川先生の気持ちにしみじみとした共感を覚えていた。そのせいか、田沼先生の笑い声に腹がたつような気持ちがした。すると、朝倉先生が言った。
「どうだい、本田君、理事長のおっしゃるような覚悟ができたかね。」
 次郎は田沼先生のほうをぬすむように見ながら、
「ぼくは、この塾では、事件を無視することにしたらいいと思っているんです。」
「無視する、というと?」
「いっさい、ふれないんです。ふれないでお
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