《びしょう》しながら、
「あたくしどもの苦労なんて、苦労のうちにははいりませんわ。どうせ先生のおあとをついてまわるだけですもの。ほほほ。」
 夫人は、しかし、そのあとすぐしんみりして、
「でも、この塾はどうなるんでございましょう。あとにどなたか……」
「それは、あなた方と運命をともにするよりほかありませんね。」
 田沼先生は、きっぱりこたえた。すると、小川先生がどもるような声で、
「理事長、すると、あなたはもう、塾の閉鎖《へいさ》まで決心されているんですか。」
「ええ、最悪の場合は、こちらが決心しなくとも、自然そうなるでしょうし……」
「しかし、それは避《さ》けられないことではないでしょう。」
「むろん、避けられるだけは避けます。無用な摩擦《まさつ》をおこして自分から最悪の事態に落ちこむようなことはしないつもりです。しかし大義名分をみだすようなことにまで、お調子をあわせるわけには行きますまい。」
「軍では、もう、そういうことについて、何かいいだしているんですか。」
「正面きって何もいいだしているわけではありません。しかし、叛乱とか叛軍とかいう言葉は、今のところ絶対|禁物《きんもつ》のよ
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