ばらく眼をつぶったが、
「実は、今朝ほんの五分間ほどお目にかかって来たのです。」
 みんなは眼を見はった。田沼先生は、しかし、もうそれ以上そのことについて何も言おうとはしなかった。沈黙《ちんもく》がかなりながいことつづいた。次郎はかって経験したことのない異様な興奮と、厳粛《げんしゅく》な気持ちとを同時に味わいながら、じっと先生の横顔を見つめていた。すると、朝倉先生が、沈黙をときほぐすように、たずねた。
「叛乱をおこした若い将校たちは、すると、皇道派《こうどうは》ですね。」
「ええ、まあそうだと見なければなりますまい。統制派と見られていた教育|総監《そうかん》の渡辺大将が遭難《そうなん》されたのですから……。しかし、叛乱がいずれの側からおこされたかということは、今はもう問題ではありますまい。罪は軍全体にありますよ。」
「それは、むろん、そうです。もっとつきつめると、国民全体にあるとも言えますね。」
「ええ。おたがいとしては、そこまで考えてあと始末にかかる覚悟《かくご》がたいせつでしょう。ことにこの塾堂なんかではね。」
 朝倉夫人は、眼をふせがちにして三人の話をきいていたが、
「叛乱に参加
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