うした調子の中に、理論の骨組みが力強くとおっており、それを人間の誠実さが肉付けしていて、何となく鰹節《かつおぶし》の味を思わせるものがあった。なお、田沼《たぬま》理事長や、朝倉塾長とは古くから親交があり、塾創立の協力者として理事会に名をつらねていたばかりでなく、この村に住んでいる関係で、自分の講義のない日でも、ひまさえあると顔を出し、夜の座談会などにも、喜んで加わるといったふうであった。そんなわけで、次郎はもうとうから、小川先生に対しては家族的な親愛感をさえ覚え、塾生たちといっしょに、その講義をきくのを楽しみにしていたのである。――むろん、講義の骨組みは毎回大体同じであった。しかし、先生がおりおり眼をつぶったあと、じっと塾生たちを見つめてもらす言葉の中には、深い人生体験と、思索《しさく》の中から生まれた、新しい知恵の言葉があり、それが次郎をして同じ講義を何度きいてもあかせない魅力《みりょく》になっていたのであった。
 小川先生の講義は八時からはじまった。正午までの四時間を適当に二回に切って話すことになっていたが、その第一回目の半ばをすぎたころ、給仕の河瀬《かわせ》が講堂にはいって来て、
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