雪は昨夜もふりつづいたらしく、赤松《あかまつ》がずっしりと重く枝《えだ》をたれており、くぬぎ林が、雪だるまをならべたようにまるまっていた。
この数日は、門から玄関《げんかん》までの道の雪をかくことが、塾生たちの朝食後の仕事になっていたが、今日は、まだかき終わらないうちに、外来講師《がいらいこうし》の小川先生が、ゴム長をはいてやって来た。たいていの外来講師は、下赤塚《しもあかつか》駅から、塾《じゅく》で特約してあるタクシーに乗って来るのだったが、小川先生はこの村に住宅を構えているので、いつも徒歩だったのである。
次郎は、外来講師の中のだれよりも小川先生に親しみを感じていた。先生は農学博士で、日本の村落史研究の権威《けんい》であり、友愛塾では、毎回その研究を背景にして、新しい農村協同社会の理想を説くのだったが、色の黒い、五分|刈《が》り無髯《むぜん》の、ごつごつしたその風貌《ふうぼう》は、学者というよりは、鍬《くわ》をかついでいる百姓《ひゃくしょう》の親爺《おやじ》さんといったほうが適当であり、講義の調子も、その風貌にふさわしく、訥々《とつとつ》として渋《しぶ》りがちだった。しかし、そ
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