らには、少なくとも朝倉先生夫妻だけには、十分|納得《なっとく》の行く理由を述べて断わる必要があった。しかし、その理由を正直に述べる気にはまだどうしてもなれなかったし、かといって、うそをつくのは、このごろのかれとしては、なおさら苦しいことだったのである。
朝倉先生夫妻は、これまで、日曜には、朝の行事をおわり、朝食をすましたあとは、すぐ空林庵《くうりんあん》に引きとり、読書をしたり、書きものをしたりしてすごす習慣だったが、居残《いのこ》りの塾生の中には、よく個人的問題について相談をもちかけて行くものがあり、先生夫妻も、喜んでそれを迎《むか》えるといったふうだったので、そうした塾生が三四人もあると、それで一日が終わるというようなことも決してめずらしくはなかった。今日は、しかし、朝食のあとで、全員居残りだときくと、朝倉先生は、夫人と顔を見合わせ、
「じゃあ、私たちも居残りだ。何か話がある人は塾長室にやって来たまえ。」
と言って、すぐ塾長室にはいり、何か書きものをはじめたのだった。
こうして、雪は塾生たちから外出の楽しみを奪《うば》ったが、それは必ずしもかれらの気持ちを冷たくしたとばかりは
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