分は、いったい、自分にとってどんなたいせつな願いを生かそうとしているのだ。どんなたいせつな願いを生かそうとして、兄に対してあんな返事を書いたというのだ。――
 道江《みちえ》の生涯《しょうがい》の幸福のために?――なるほど、自分は心のどこかで、そんなことを考えていないのではない。だが、それがはたして自分の真実の願いだと言えるのか。道江と恭一との幸福な生活を将来に想像して、自分は今現に心の底からの喜びを感じていると言えるのか。正直のところ、心の底には、喜びどころか、むしろ呪《のろ》いに似た気持ちさえ動いているのではないのか。――
 あらゆる苦悩《くのう》にたえて、そうした呪いに似た気持ちを克服《こくふく》するのだ、と、そう自分に言いきかせて、自分をはげますことに、ある誇《ほこ》りを感じていないのではない。だが、そうした誇りに生きることが、自分にとってはたしてのっぴきならぬ願いなのか。その願いのまえには、どんな他の願いも犠牲《ぎせい》にされていいほど自分にとって高価な願いなのか。もしそれが、それほど高価な、それほどのっぴきならぬ願いなら、兄からのつぎの手紙を期待するような今の気持ちは、いっ
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